トイプードルのPRA(進行性網膜萎縮症)とは?

トイプードルのPRA(進行性網膜萎縮症)とは?

皆さんは、PRA(進行性網膜萎縮症)をご存知ですか?遺伝病の1つでトイプードルに多いと言われているこの病気について、今回は、その原因と症状・遺伝の仕組みと、子犬探しの際のポイント、そしてPRAが疑われた場合の検査や治療、費用についてご紹介します。

そもそもPRA(進行性網膜萎縮症)とは?

PRA(進行性網膜萎縮症)とは、目の中の網膜にある視細胞という光を吸収するための細胞に障害が起こり、目が見えなくなってしまう遺伝病です。

視細胞には、明るい場所を見るために働く錐体細胞と、暗い場所を見るために働く桿体細胞があります。

初期病変の出現部位によって桿錐体異形成、桿体異形成、錐体異形成に分類されますが、トイプードルでは主に桿錐体異形成が見られます。

生後すぐ〜1歳頃から症状が見られる早発型と、5〜6歳から症状が見られる遅発型の2種類があり、トイプードルは主に遅発型が多いです。

いずれにせよ、発病から1〜2年の経過を経て網膜全層の視細胞に障害を起こして萎縮し、最終的に失明してしまいます。

PRAに最もかかりやすい犬種はミニチュアダックスフントだと言われていますが、トイプードルはそれに次いで多く見られます。

その他にもラブラドール・レトリバーやミニチュア・シュナウザー、チワワ、パピヨンなどの人気種をはじめとする100品種以上の犬と数品種の猫で発生が報告されている遺伝病です。

PRAの症状は?

私たち人間と違い、犬は網膜に「タペタム」という構造があります。

犬の目が暗闇で光っている理由も、このタペタムがあるからです。これは、網膜と脈絡層の間にある反射層で、このタペタムに光が反射することで暗闇でも物を見ることができます。

タペタムを持つ動物では網膜の視細胞の多くが桿体細胞から構成されているため、PRAの初期にはまず夕暮れや夜間などの暗闇での視覚が低下します。

飼い主の方が気づくきっかけとして多いのは、

  • 夕方以降の散歩ではあまり歩きたがらない
  • 暗い部屋に行くと動かなくなってしまう

などです。

高齢犬では他の目の病気や体の衰えなどから同じような症状を見ることもありますが、PRAの場合若齢犬や成犬で初期症状が見られますので、注意した方が良いかもしれません。

さらに病気が進行すると、視細胞が萎縮していき、昼間や明るいところでの視覚も低下していきます。

物によくぶつかる、飼い主とアイコンタクトが取れなくなる、匂いながら歩くようになるなどの症状が見られるようになります。

進行すると白内障を伴い、失明してしまう病気です。

しかし、この病気は進行が緩やかであるため、今までの記憶を元に通常通りに行動する犬も多く、飼い主にとっては気付きにくい病気でもあります。

あらかじめ発病する可能性があると分かっている個体を飼う場合には、注意深く観察し、その変化に早く気づいてあげることが大切です。

PRAの原因、遺伝の仕組みを解説!発症させないためには?

PRAの原因は、常染色体の劣性遺伝によるものです。

臓器や器官などの性質を決める遺伝子には、「優性」のものと「劣性」のものがあります。この2つはどちらが優れているという意味ではなく、出やすい性質と出にくい性質という意味です。

哺乳類は母親と父親から半分ずつ遺伝子をもらいます。この時、目や体毛などそれぞれの部位について、優性遺伝子を持っている方に似る可能性が高くなります。

これを「メンデルの法則」と言います。この法則によると、遺伝子において優勢のものは「A」、劣性のものは「a」と表されます。

1つの部分を決めるのに必要な遺伝子は2つですので、組み合わせパターンは「AA」「A a」「 aa」のいずれかになります。

この組み合わせパターンのうち、優性遺伝子が1つでも含まれている場合(AAとA a)、優性の性質が現れるという仕組みです。

例えば、白い毛の遺伝子「AA」を持つ母親と黒い毛の遺伝子「aa」を持つ父親が交配をすると、その子供の「体毛の色」を決める遺伝子は母親からAを1つ、父親からaを1つ受け取り、「Aa」つまり白になります。

ここで注意して欲しいのが、親が「A a」の遺伝子を持つ場合です。例えば、母親も父親も「A a」の白であれば、両親から1つずつ遺伝子をもらうと、その組み合わせは「AA」「A a」「aa」の3パターンになります。

この時、劣性遺伝子が2つ揃った「aa」を受け継いだ子供のみ体毛が黒になるというわけです(全ての子供のうち25%でaaが現れます)。

PRAも同じ仕組みで、「aa」の遺伝子を受け継いだ犬がかかってしまう遺伝病です。

つまり、親がPRAを発症していなくても、「A a」の遺伝子を持っている健康な個体である場合、遺伝子の組み合わせによっては発症してしまう可能性があります。

「A a」の遺伝子を持つ個体は、発症はしませんが、発病遺伝子を持つ「キャリアー」と呼ばれる個体となります。親の片方でもキャリアーであった場合、子供は発病遺伝子を持ってしまう可能性があります。

現在販売されているトイプードルのうち、PRA遺伝子を全く持たない犬は66%、キャリアーは31%、PRA発病個体は3%であるという調査結果もあり、子に遺伝してしまう可能性のあるキャリアーは意外と多いのが現状です。

PRAを発症させないためには、まずはこの遺伝の仕組みを理解することが大切です。そして、遺伝子検査を行い、親の個体がキャリアーでないかを確認する必要があります。

親がキャリアーである場合、ブリーダーは交配をさせないのが理想的でありますが、現状では検査をしない、又は行なっているが交配させているブリーダーも存在するのが事実です。

きちんと遺伝子検査を行なっていることを証明している、信頼できるブリーダーから子犬を探すのが良いでしょう。

子犬探しの際には、PRAの遺伝病検査がされているか確認しましょう!

長年、高い人気を誇るトイプードルですが、子犬探しをする際には、PRAの遺伝子検査が行われているかを確認する必要があります。

遺伝子病は両親の遺伝子検査をし、それを元にブリーダーが正しい交配をすれば防ぐことができます。繁殖に用いる全頭で検査を行っていることを証明するブリーダーの確認をしましょう。

また、トイプードルにおいて、遺伝病で発生が報告されている物に、PRAの他にVWD(フォン・ウィルブラント病)、DM(変性性脊髄症)、HD(股関節形成不全)があります。

VWDは止血異常の病気で、出血しやすく、出血すると止まりにくくなってしまいます。

DMは進行性の神経疾患で、四肢をはじめとして全身が麻痺し、呼吸困難に陥る致死性の高い病気です。

HDは股関節が形態的に異常な状態となり、正常な歩行ができなくなってしまいます。

これらの病気も合わせてキャリアーやアフェクテッド(発病する可能性が高いaaの遺伝子を持つ個体)でないことを確認しておくのがおすすめです。

PRAの検査・治療を解説!費用はどれくらい?

遺伝子検査は、遺伝子病ごとに検査を受ける必要があります。つまり、PRAの検査は専用の試薬を使って検査を行いますが、検査自体は1回で済みます。

生後、離乳が終わった段階から検査が可能で、結果は1週間ほどで出ます。

PRAの遺伝子検査は業者によって差がありますが、1項目だと7,000〜20,000円程で検査が可能です。

ほとんどの業者が、同じ個体で2項目以上の検査を行うと1項目ずつよりお得な価格で行えるため、検査の際は複数項目同時に行うのがおすすめです。

遺伝子検査のサンプルは簡単にすることができます。サンプルブラシを口の中に入れ、頰の内側にブラシを擦り付けて口腔粘膜を採取し、乾燥させて業者に送ります。

病院でもできますが、自宅からも業者に送ることが可能ですので、必要があれば行ってもいいと思います。

PRAは遺伝による病気で、現代の獣医療の技術では治療薬や手術による治療はできません。PRAの診断は、身体検査や行動診断、網膜検査によって行いますが、その診断には10,000円前後かかります。

二次診療の病院や大学病院では、網膜電位検査によって視力の有無を麻酔下で検査できますが、その場合費用は30,000円程かかります。

しかし元々発病遺伝子を持つ個体である事を理解しておけば、ここまでしなくてもPRAであることが診断できます。

PRAを早期発見できた場合、その進行を遅らせるためにビタミンEやアスタキサンチンという抗酸化剤や犬用のサプリメントを服用し、網膜組織が酸化し変性してしまうのを遅らせますが、その効果は大きくありません。

しかし、PRAは白内障に進行してしまう可能性があるため、定期的に通院し、病気の進行状況を理解しながら、一緒に寄り添って行きましょう。

PRAの診断後、飼い主は愛犬の余生を過ごすために、生活環境を整えてあげる必要があります。

診断が出た後、飼い主の方がすぐにできる事を具体的にいくつかあげておきます。

  • 家の中で飼い犬の歩くスペースにぶつかると怪我をするものを置かない
  • フローリングを避け、生活スペースをすべらない素材の床にする
  • アイコンタクトの代わりになる新しい合図を作る(声かけやタッチによるもの)

これらの対策を初期から行う事で、視界が徐々に悪くなっていき進行が進んでも、愛犬はパニックにならずに生活を送ることができます。

PRAは、事前に遺伝子検査をすれば防ぐことのできる遺伝病です。子犬を迎える際には、必ずブリーダーに確認しましょう。

ブリーダーは、遺伝子検査の結果、キャリアーやアフェクテッドであることが発覚した場合、その個体を繁殖に使うべきではなく、それらの個体を販売する場合には、飼い主の方にしっかり説明するべきです。

もし、飼った後に病気が発覚した場合は、獣医師に相談し、現状を理解してあげることが大切です。

診断後も定期的に動物病院に通い、その進行の度合いを確認すると共に、白内障など他の眼の疾患を併発していないかを検査しながら、少しでも進行を遅らせるように治療していきましょう。

また、PRAは、治癒が難しい病気ではありますが、その進行は緩やかなものであるのも特徴です。これを生かして、愛犬と一緒に少しずつ病気に慣れていくことで、幸せに暮らすこともできます。

事前に防ぐことができるはずの遺伝病ですが、現状では全てのブリーダーが適切な繁殖を行なっているわけではなく、トイプードルでも多くの個体で遺伝病が見られるのが事実です。

そのことをよく理解した上で犬を迎え、健康な一生でも、発病し病気と寄り添いながらの一生でも、最後まで責任を持って一緒に暮らしていくことが大切なのではないかと思います。

トイプードルのPRA(進行性網膜萎縮症)とは?